Exhibition

Room 1+2企画展
鳴 動
小原孝博
会期:2026.05.28(THU)- 2026.06.14(SUN)
12:00-19:00(月曜休廊 最終日16:00まで)
伊勢、出雲、高千穂などの神話の世界。黒潮が繋ぐ神の島沖縄。縄文が生き続ける屋久島の森。列島の西側や南の島で感じた気配との違いは、あるいは類似するものとは。それを探すために雪国の遅い春を待ち、日本海側をゆっくり北上しながら津軽を目指した。
迫り来る山々を縫うように関越道を走ると、突然現れる魚沼の広大な水田に圧倒される。長岡ジャンクションから右に進路をとり、北陸自動車で日本海に沿い弥彦神社へ。ロープウェイで弥彦山山頂に登り、奥宮でこの旅の安全を祈願する。見上げると太陽を中心に丸い虹が現れた。水平に伸びた雲が上方より降り円と重なり、その前を二匹の蝶が横切る。吉兆。
出羽三山からは内陸を移動し、山寺の奥にある垂水遺跡へ。異界、魔界、異形、寄せ付けないほどの圧倒的な岩肌。撮っては離れを繰り返し、心理的距離を縮めていく。すると岩肌に浮かんだ異星人のような顔が「こっちの角度から…」と話しかけてきたように感じ、言われるままにアングルを決めた。
日本海側に戻り遊佐へ。縄文遺跡や原始林に囲まれ、エメラルドグリーンに輝く丸池様。池そのものが御神体で、その池からは見られ、森には包まれているような不思議な感覚になる。祈るように手を合わせ、その隙間にカメラを入れる。その神秘性に魅せられ、冬に再び雪の舞う丸池様と対面することになる。
男鹿半島を周り白神山地十二湖、岩木山に魅せられて弘前、三内丸山縄文遺跡。下北半島を北上し恐山の奥宮仏ヶ浦へ。到着時は平坦だった空と光だが、時間が経つにつれて太陽の周辺に雲が集まり、奇岩の上空で描かれた景色はまるで極楽浄土。新緑の八甲田から十和田湖、奥入瀬渓流。賢治の世界を思いながら岩手山に早池峰山。遠野は丸池様とも仏ヶ浦とも違う、水平に広がる歪みを感じた。平泉からは太平洋岸に出て雄鹿半島。旅も3週間目が過ぎていくとアクシデントが多発する。車の故障、眼鏡の破損、電子機器類の不調などの連続。ここで最初の旅の引き時とする。
前回は雪に閉ざされていたブナの森に会いに初夏の白神山地へ。枝と枝が風で擦れ合い傷つくのを避け、ブナの木は間隔を開けて成長する。ゆえに森は光溢れ、水の音が響き、風が通り抜けていく。早池峰神社で精霊が住むと教えられた場所の清らかさに似た感覚がある。気配の先の何かを想像しながらシャッターを押す。数分の撮影の後に、感謝の心で「撮影終了…」と呟くと、まるで劇場の照明スイッチを切ったかの如く一瞬で森が暗くなった。
紅葉情報を確認しながら晩秋の森へ。東北道を北上しながら日光、裏磐梯、小安峡、再び遠野から八戸。そして黄金に輝くブナ林が広がる奥入瀬渓流、白神山地。季節を変えて旅をすると、変わるものと変わらぬものが確認出来る。時に表と裏が逆転することも。旅では自らの限界に挑戦することもある。乗り越えなければ会えない景色。
信仰という言葉が生まれる以前の古代人の自然感覚。変幻自在な原初の魂達の共生。長い冬が、積もる雪が、現代の体系化されたシステムからこの地を守ってきた。温暖な地では権力が幾度も変わり、その度に上塗りされ、土地の持つ本来の純粋なエネルギーが失われてきた。北の地では原初の「何か」を感じることが出来た。古の光が、岩戸からすり抜け、再び現れることを祈りながらさらに旅を続けた。
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小原孝博
静岡県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、文藝春秋写真部を経て独立。1987年よりマラドーナを追いかけイタリア、アルゼンチンへ。イタリアセリエA、W杯イタリア大会などを撮影し『スポーツグラフィック・ナンバー』にて掲載。共著に『サッカーへの招待 』梧桐書院。
その後バリ島に魅せられ祭や芸能、島民の暮らしを撮影。写真集に『オラン・バリ』ダイヤモンド社 。掲載媒体にJAL機内誌『WINDS』JCBカード会員誌『THE GOLD』『プレジデント』『クレア』など多数。写真展に『音降る島』、バリ島にて『AMBIENT BALI』など。テレビ出演として『WANDER EARTH TRAVELLER』 BS-TBS。
他の媒体として『文藝春秋』『ダンチュウ』『アエラ』『カメラマガジン』『エスクアイア』『別冊太陽』『Coyote』など。
写真展として『息吹き』『鳴動』ルーニィ247ファインアーツ、『光の音色』iiaギャラリーなど。
現在は日本中の聖地を撮り続けている。
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