街を歩いた写真を眺めるうちに、幼い頃の記憶が呼び起される。
言い知れぬ不安、心細さに駆られる、いまここに、この世界にいるのは自分だけなのではないか。
外山由梨佳は、見慣れているはずの景色は写真に残すと、現実から離れて想像上の景色のように感じることがあるという。
数年前に亡くなった写真家・飯田鉄は外山にとって、本格的に写真を撮るきっかけを与えてくれた存在でした。
街を歩き写真に収めるとは、一体何なのだろう、ある種とりとめのないかもしれぬ、小さな問いを抱えながら１０年あまりにわたり東京とその周辺を歩いてきました。
多くの人にとって名もなき場所、足早に通り過ぎるだけの街路の中で、足を留め、そこにある小さな建物や入り組んだ路地の奥へと視線を送ります。
誰にでも理解されるとは思わない、ささやかな行為に、少し先を歩いていた写真家の存在は大きかった。
外山は飯田が残したいくつかの写真と言葉を繰り返したどりながら、自分が撮り集めてきた写真を形にまとめることを思い立ちました。
どこにでもありそうだけど、気がついたら出口が見えない迷路に入り込んだような
不思議なモノクロームの都市の連なりをゆっくりと味わってください。
会期に併せまして、展示作品以外のカットも収録したカタログを制作いたします。
是非お越しくださいませ。

ルーニィ篠原