Roonee 247 Fine Arts(ルーニィ・247ファインアーツ)

Exhibition

Room 1+2個展

小原孝博写真展 息吹き

小原孝博

会期:2023.12.12(TUE)- 2023.12.24(SUN)

12:00 - 19:00 (最終日 16:00 まで)月曜日定休

東日本大震災から二週間ほど経つと陸前高田から電話があった。被害にあった写真館に代わり入学式をボランティアで撮って欲しいとの家族が被災した友人からの願いだった。このフォトジャーナリストの願いに写真家仲間達が賛同し、手分けして市内の小中学校へと向かった。かつて街のあった陸地はまるで月のクレーターのようだった。これまで嗅いだことのない強烈で異様な匂い。大きなショックを受けた時に身を守る為に感情を閉じることがあるがこの時も同じような感覚だった。山間を走り目的の小学校に着く。校舎は無事だが校庭は緊急車両や救援物資等で溢れていた。異様な光景の中でも式では子供達も職員も家族も笑顔でいっぱいだった。カメラの前に整列した全員のために、晴れ姿を見ることが出来なかった天国の家族のためにも全身全霊でシャッターを押した。帰宅して心の整理がついた頃にブログを開けた。被災地のことを書くのではなく、かつての文章から「わたし」の文字と未熟な表現を消すために。

聖地を巡り気配を感じ、手を合わせて目を閉じる。風を身体に受けると直接に、樹々を揺らす音を聴けば立体として自分の存在を確認する。聖地は穢れから浄化へと循環する場、イヤシロチ。旅の途中で、震災やコロナ禍で傷ついた様々な心、閉じ込めてしまった心を、解放するお手伝いがこの時代に生きる意味と思うようになった。アマテラスの岩戸開きのような、心の岩戸開き。写真で心を繋げたい。魂が震えるような写真でありたい。それが聖地との約束となった。

高千穂、出雲、伊勢、諏訪。コロナの中断を経て熊野、吉野、また熊野。出雲、丹波、戸隠、諏訪、沖縄。ひとつの旅の走行距離が二千キロに及ぶこともあった。聖地を歩き続ける中で土地の持つ気配がそれぞれに違うことに気が付いた。人に個性があるように聖地もまた多様である。多様でありながら結びついている。熊野にいると南方からの潮の流れを感じ沖縄に心が飛ぶ。柔らかで優しい気配を感じれば女神神話のある聖地を旅してみたくなる。行けば新しい縁が繋がる。まるで用意されていた旅のように。道なき野を歩くような聖地を巡る旅に徐々に幻の道が浮かび上がってきた。しかしリスクを考えた瞬間にその道は消える。リスクで行動を誤魔化すことはもはや出来ない。その先にある景色を見てみたい。

巡礼の終わりに選んだのは対馬と壱岐。魏志倭人伝に最初に登場する大陸や半島に最も近い島。対馬のアマテルを奈良に、壱岐のツキヨミを京都に遷座したと日本書紀に記された歴史を持つ。そして今もなお原始の風景が残る飾りのない島。見栄えよく撮ろうとする上っ面な意識は通用しない。撮る意識を捨て、原始の光に委ねてみる。「わたし」を消しありのままに、それがいつも以上の自然との一体感を感じる。樹々の重なりは喜びの重なり、木漏れ日は心の震え。流れてくる緩やかで優しい気配には感謝の言葉しか出てこない。大自然の息吹きを感じながら。

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