Exhibition

Recommend wall企画展
マリー・アントワネット、再び ― 技法の転換点 ― Le point de bascule
櫻井朋成
会期:2026.03.03(TUE)- 2026.03.15(SUN)
12:00-19:00(月曜休廊 最終日16:00まで)
2022年、一冊の本から、ひとつの気配へと導かれた。
「マリー・アントワネットは何を食べていたか」。
その問いは、王妃の嗜好を知るためというより、
時代の感覚に触れるための入口だった。
食卓を辿ることは、
味覚が文化へと変わり始める、その兆しを孕んだ
彼女の時間に触れることだった。
ヴェルサイユ宮殿に残る光、壁の陰影、
幾層にも重なった静けさ。
そこに確かに存在したはずの彼女の気配を、
私は写真として掬い取ろうとした。
本作は、撮影から版の制作、刷りに至るまで、
すべてを自らの手で行った最初の作品である。
フォトポリマーによる刷りは、技法の選択というより、
距離を縮めるための行為だった。
誰かの手を介さず、触れ、刷ること。
それは、彼女の痕跡により近づくための、静かな決意でもあった。
時を経たいま、あらためてこの作品を見つめ直す。
そこに写っているのは、マリー・アントワネットという名を纏った記憶であり、
同時に、ひとりの作り手が歩み始めた転換点の、かすかな痕跡でもある。








